追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
第三章
◇sideカーゴ◇
カフェのすぐ横に立つ一本の巨木。俺はその巨木の影にピタリと被さるようにして、ジーッと、ジーッと窓越しに中の様子を窺っていた。
……けしからん。これはたいへんに、けしからん。おのれあの男、俺のアイリーンに鼻の下を伸ばすなど、言語道断だ!
俺は怒りに尾っぽをビビビビッと尖らせて、荒ぶる心のまま右の肉球でペチコンッと巨木の根本をパンチした。巨木はその衝撃で憐れなほど、ぐらぐらと揺れた。
アイリーンは俺のだ。俺のだぞー!
……い、いかん。
薄れる理性の片隅で、意識がだんだんと獣の本能に引き摺られている事を自覚していた。
これは本降りになる前に、早々に戻らねば大変な事になる!
俺は後ろ髪引かれる思いで巨木から前足を外すと、地面にトンッと四つ足になった。そのままルークと同居するロッジへと駆け出した。
――テテテテテッ、テテテッ……テク、テク……ピタッ。
しかしロッジに向かう途中で、足が止まった。
……どうして俺はロッジに戻らなければならないんだ?
コテンと首を傾げる。その時、たまたま視界に映った空はぶ厚い雨雲に覆われていた。
パラパラとした降り始めの雨は、いつの間にかザーザーと本降りに変わっていた。