好きなんだから仕方ない。
二章・おいでと伸ばされた手

何を考えれば良いの

風が心地良い。試練なんてどうでも良い。このままどこかへ行ってしまいたい。なんてね。無理か。

「エイミア様、お食事の準備が整いました」

「・・・ありがとう。今行く」

「かしこまりました。失礼致します」

本当は言いたかった。あの時、あの女中と何を話していたのって。もう、愛の告白をされて恋人同士になってしまったのって。
クロエラが私の前にいる時、それは執事として。仕事として。だから本音を伝えてくれる事がない。訊いても上手くかわされてしまう。
ダメね、考えても仕方ない事は分かっているのに。
両頬を叩いて自分自身に気合いを入れてから部屋を出た。そこにはいつも通りクロエラが待っていて、食卓まで同行してくれた。
珍しく長男が来ていないんだなと思いながら次男に挨拶するといつも通り八重歯を光らせながら笑みを返してくれた。人懐っこいのに男気のある次男と話すと裏表が無いから少し落ち着く。
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