王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】
「す、すみません」
とっさに謝った私が起き上がろうとしたところ、するりとうなじに何かが触れる。
それが社長の手だと気づいたのは、そのまま動きを止めて、顔をあげたときだった。
彼は眼鏡がなくともくっきり見える距離で、睫毛を揺らしながら覗き込こむ。
「――君が欲しい」
長い腕が腰に絡みつき、深いソファの上で向かい合うように抱き締められる。
かろうじて、ソファの縁に膝をついていた私は、不安定なバランスの中、飛び込むような形で身を寄せてしまった。
「――だから僕と結婚して」
一瞬、言葉の意味を理解できなかった。
唖然とする私を、眼鏡がなくともくっきり見える距離から、金色の睫毛に縁取られた甘い瞳が私を覗き込んでいて。
そして、一瞬だった。
するりとうなじに指先が絡みつき、
彼は頬を傾け、
ゆっくりと碧色の宝石を瞼の奥にしまいこむと、
いつの間にか、私たちの唇は触れ合っていた。