気まぐれな猫と俺様束縛系飼い主のちょっと危険で甘い生活
黒瀬組
俺は久々に、実家である黒瀬組本家へと向かっていた。

家業が家業だけに、小さい頃は窮屈に感じる事も多かった。

他の人間と自分の置かれている環境が違うと感じたのは幾つの時だったか。

蔑みながらも恐怖する目を何度向けられてきただろう。

次第に笑わなくなり口数も減っていき、寄ってくる女も俺のバックにみえる
地位、権力、金・・・俺は、女を道具の様に扱い近くに寄せることもなく
気づけは繁華街でキングと呼ばれる様になっていた。

でも・・自分はまだ良い。

兄貴たちは・・・。


そんな事を考えていると、車は黒瀬組本家の門をくぐり中に入っていく。

周囲とは一線を画すように建物の周りを高い塀に囲まれ、大きな門をくぐれ
ば現れる、大きな日本家屋。

俺の乗る車に気がついた組の若い衆が数人、駆けてきた。

車から降りると人相悪く厳つい男達が頭を下げる。

俺は確かにこの黒瀬の家の家族だが、組の為に動いているのは長男の(ツカサ)
次男の(カナメ)、俺は昔から好きな事をさせてもらってきた。

だから、俺に頭なんて下げなくてもいいものを、組の奴らは律儀のもので
いつもこうして頭を下げて来る。

俺は、兄貴たちのために何ができるだろう・・・。

俺は、軽く手を上げ玄関に向かった。


この時の俺は、今日偶然にもここに足を運んだことで、一生を誓う相手を手に
入れ俺自身が変わっていくことになるとは思ってもいなかった。

< 31 / 104 >

この作品をシェア

pagetop