わたしたちの好きなひと
第6章『ほほを伝うのは…雨』
 サッカー部は3回戦で敗退した。
 今年も全国への門は、恭太の前で開かなかった。
 わたしは時々考える。
 恭太が選んだものと捨てたものを。
 サッカーの推薦を受けて、強豪校に進学していれば、恭太は充分すぎるほどの理解と、もっとたくさんの声援を受けられたはず。
 参加することに意義がある、なんて。
 一所懸命に努力しているひとに言えるひとは、きっと努力したことがないひとだ。
 やってもやっても報われない。
 結果を出せない無念さって、どれほどのものだろう。
 サッカーはチームスポーツだから、ゲームに勝てない無念さは仲間すべてに等しく重いんだろうけど……。
 
 試合を応援に行った女の子たちは泣いて泣いて、観客席に最後の礼をする部員たちをうなだれさせたらしい。
 マネージャーとして、仲間として、それを見た岡本は
『いっそ、ぶんなぐりたかったわ』と苦笑しながら、それをわたしに話してくれたから。
 きっと部員の前で涙は見せなかったろう。
 (わたしも……)
 わたしも泣かないよ。
 恭太がサッカーを続けるかぎり。
 負けた試合のために、わたしは泣かない。
 いっしょにこぶしを握って。
 次のシーズンも、その次のシーズンも。
 遠くからずっと見てるからね。
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