エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
後朝の後悔と断捨離
***
 
 夢で、私は泥の中にいた。

 この泥がとてつもなくあたたかくて肌に滑らかに触れて、心地よい。だけど、さっきから前髪をくすぐるのはなんだろう。

「……んん」

 こそばくて、それから逃げるように目の前の温もりにしがみつく。すると、ごくりと息を呑んだ。私ではなく、私がしがみついている人が。

「後藤さん。ちょっと、朝からあんまりかわいいことをされると……」

 その声に、ばちっと目が覚めた。しがみついていた体を離すように腕をつっぱり顔を上げる。

「た、高野せんせ……」
「ん。おはよ」

 寝起きで、少し乱れた髪が額にかかっている。首を傾げて微笑むさまが、壮絶に艶っぽかった。固まる私に、彼はお構いなしに覆いかぶさってくる。

「あ、ちょ、まっ……」

 つっぱっていた手は役に立たず、あっさりと彼につかまりシーツに押し付けられた。額や鼻の先、頬とキスをされ最後に唇を塞がれる。
 舌が入り込み浅く絡ませ合ったあと、下唇を啄んですぐに離れた。

「……朝から抱いていいなら、このまま続けるけど」

 そのセリフに、キスで陶然としかけていた意識が戻り、はっとする。

「だ、だめ」

 慌てて首を振った。もちろん、酔いも覚めて冷静になった今いろんな意味でダメだけれど、物理的にダメだ。

 昨夜は、今まで知らないくらいに乱された。ソファのあと寝室まで抱き上げて運ばれて、そこでも抱かれた。何回とかもうわからないくらいで、最後は気絶するように眠ったのだと思う。だって覚えてないから。
 おかげさまで、今、下半身が酷く重怠い。筋肉痛にもなっているのか、ちょっと身じろぎをしただけで太腿やお尻も痛い。

「残念。身体、大丈夫か」
「……平気です」

 下半身が辛いです、とは恥ずかしくてとても言えない。

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