7歳の侯爵夫人

5

森を抜けると、目の前には大きな青い湖が広がった。
「うわー、綺麗!旦那様の目の色みたい!」

馬から下ろしてやると、コンスタンスは靴を脱ぎ捨て、湖へ向かって走った。
躊躇することなく湖に足を踏み入れると、
「冷たい!」
と声を上げる。
膝の上までスカートを持ち上げてはしゃぐ妻の姿に目を細めていると、
「旦那様も早く!」
とこちらに向かって手を振った。
オレリアンもブーツを脱ぎ捨てると、妻の元へ走り寄る。

「気持ちいい!ね、旦那様!」
「ああ!……そらっ!」
オレリアンは妻を軽々と抱き上げると、水の中でくるくると回った。
コンスタンスがキャッキャと声を上げる。
だが、目が回ったのか、藻に足が取られたのか、オレリアンはバランスを崩し、コンスタンスを抱いたまま水の中に尻餅をついた。

「もー!旦那様ってば!濡れちゃったじゃない!」
「ハハッ!コニーはちょっとだろ?」
たしかに水深が浅いため、抱き上げられていたコンスタンスはそれほど濡れていない。

「でも旦那様が風邪ひいちゃうわ」
日向(ひなた)に出てれば乾くだろ?」
オレリアンは水に浸ったまま、妻を抱きしめ、微笑んだ。
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