7歳の侯爵夫人
「私は、貴女が側妃になるところなど見たくはありません。貴女が他の女と1人の男の寵を競うなど、あってはならない。例え相手が私でなくとも、貴女は唯一の女性として愛されるべき人だ」
「でも、私を側妃として差し出せば、貴方にもきっと恩恵があるはずです」
「なんてことを…!」

オレリアンはコンスタンスをキッと見据えた。
その目は怒りに燃え、肩は震えている。

(これは、誰だ)
オレリアンは自分の耳を疑った。
そして次に感じたのは、言いようのない怒りだった。

たしかに、妻を離縁して王太子の側妃に差し出せば、王室に恩を売ることが出来、出世や褒美に繋がるだろう。
そう、かつて王妃に持ち込まれた縁談によって、侯爵位を得たように。

実際結婚した当初は、妻からそんな風に思われ、蔑まれているだろうと思っていた。
だが…、オレリアンの知るコンスタンスは、こんなことを言うはずはない。

「私を、そんな男とお思いか」
彼のその怒りの目を見て、コンスタンスは深々と頭を下げた。

「申し訳ありません。失言でした」
「失言って…」

睨むように自分を見つめるオレリアンに、コンスタンスは気まずそうに口を開いた。
「私は、本当は側妃になんて、なりたくないのです。だから、侯爵様がどうお考えなのか知りたくて、」
「私を、試したのか?」

未だ怒りの収まらないオレリアンの低い声を聞き、コンスタンスは息を飲んだ。
そして胸に手を当てると落ち着かせるように目を閉じる。
深呼吸すると顔を上げ、オレリアンの蒼い瞳を真っ直ぐに見据えた。

「侯爵様…。私の…、正直な気持ちをお話ししてもよろしいですか?」
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