7歳の侯爵夫人

5

「コニー!」
フィリップはコンスタンスを見とめると、ツカツカと早足で走り寄って来た。
それは、今の『16歳のコンスタンス』が、たった2ヶ月前まで慕っていた相手である。

(殿下…!)
コンスタンスは動揺する気持ちを抑え、カーテシーをする。
「殿下、ご機嫌麗…」
「コニー!」

フィリップは挨拶するコンスタンスを無視して、その体に抱きついた。
婚約中でさえこれほど密着したことはほとんどなかったコンスタンスは、震えるほど動揺した。

「殿下!お放しください!」
「ああ、ごめん。君を見たら嬉しくて」
フィリップは抱擁は解いたが、片手はまだコンスタンスの手を握ったまま。
しかし彼女の様子から察し、
「ああ、記憶は戻ったんだね」
と微笑んだ。
前回会った時は7歳の幼女だったのだから、今の彼女の様子を見て記憶が戻ったと考えるのは当然だろう。

「じゃあもう元通りの君なんだね?ここに来てくれたということは、私の気持ちを受け入れてくれる気になったのだろう?」
「…何のことですか?私は王妃様にお茶に誘っていただいたため参じたのですが」
「…それだけか?」
フィリップは訝し気に母である王妃の方を伺った。
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