7歳の侯爵夫人
あの日、あの場所で

1

あの日、あの場所で馬車にはねられた。
そのことを、コンスタンスは思い出した。
そしてー。

「私、思い出したのです。あの事故に遭う前、私は、貴方に離縁を申し出ていたのですね」

全てを思い出したコンスタンスは、そう言ってオレリアンに寂しそうに笑った。
その笑顔に、オレリアンは胸を切り裂かれたかのような痛みを覚えた。

彼女にこんな言葉を言わせてしまうなんて。
もし過去に戻れるなら、あの頃の自分を殴りつけてやりたい。
いや、最初から…、出会ったその日から、全てをやり直したい。

「コニー…」
オレリアンは妻の手を握りしめ、その顔を切なげに見つめた。
何から、どう話せばいいのだろう。
とにかく、今までのことを全て謝って、離縁の話など全て白紙に戻して、新しく夫婦としてやり直して…。

しかし次の妻の言葉は、再びオレリアンの希望を打ち砕いた。
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