病院の中に入ると、懐かしさを感じる。しっかりした造りの建物という違いはあるが、野戦病院と同じ白衣の医師がいる。

 奥には診察台や薬棚が並べられ、動物を受け入れる準備は万端だ。

 自分のいるべき場所に帰ってきた実感をして、未だ入口に突っ立っているマリーの近くをひとりの医師が通りがかり足を止める。

「マリー? マリーじゃないか!」

「えっ。先輩?」

 声をかけてきたのは、野戦病院にいた頃の同僚。エリック王子の側近が野戦病院に顔を出した際、マリーを売った張本人だ。

「そうか。新しく入る大型新人はマリーのことか」

 また噂ばかりが先行していそうな嫌な予感がして、思いっ切り首を振る。

「なにか情報が交錯してます!」

「いや〜。マリーの治療はさすがだよ。マリーだからこそ、あの王子に連れて行かれてもやり遂げる力があると思ったんだ」

 えっ。そんな風に思っていてくれてたなんて。と、途中まで感激したものの、そうじゃないなと本能的に感じ取る。

「先輩、うまいこと言って。単にかの有名な第三王子が恐ろしかっただけですよね?」

「いや〜」

 目を泳がせる先輩に、やっぱり!と、確信する。

 だからと言って責められないけれど。私も命はないんだろうなと思ったくらいだから。