聖女の汚名返上いたします!私は悪徳大魔女ですが?
「それをまさかこうして第二の人生で叶えるなんて。やっぱり私って魔女になるべくして生まれたのね!」

 思わず両手でガッツポーズをする。そして彼女は右手の人差し指と中指を交差させ軽く宙で動かす。

(カノ)

 シャルロッテの声と共に手のひらの上には小さな炎が灯った。シャルロッテと同じわずかに紫がかった青白い炎が揺らめく。続けて上機嫌に手を握ると炎はさっと姿を消す。

 今シャルロッテが生きる世界は、魔術や魔力、そして魔女が当然のように存在しうる。 

「さて、転んでもただでは起きないのは前世からなのよね」

 シャルロッテは今まで自分の住んでいた館にじっと視線を送る。父親を呪い殺したというのは不名誉極まりないが、これも大魔女として背負うべくひとつの逸話として受け入れることにする。

 それに優しかった父ならきっとわかってくれるだろう。

 ペネロペもクローディアも公爵家の肩書きは必要としているので名前に傷がつく真似はしないだろう。邪魔なのはシャルロッテだけだった。彼女は口角を上げ妖しく笑う。

「邪魔者上等。そのうち私の大魔女伝説の一端になってもらうからね」

 その時が楽しみだ。さいわい魔女を目指していたのでひとりで生きていく術は前世からとっくに身についている。

 スローライフ万歳! 野草や薬草の知識を活かすときがついにやってきた!

 残念なのは、地下倉庫にある魔術書をまだすべて完読できていないことだ。

 まぁ、〝そのとき〟にとっておきましょうか。

 シャルロッテ・シュヴァン公爵令嬢はこの日、不慮の事故により亡くなったと伝えられた。
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