子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
口付けは夢のぬくもり

 久し振りに保名さんと話せたからといって、夫婦生活が進展するわけではなかった。

 それどころか、以前にも増して保名さんから避けられている。

 仕事から帰らない日も増えたが、私にはどうすることもできなかった。

 そんなある日、ベランダで窓を磨いていた私は、電話の音に気付いて家の中へ戻った。

 この家に来てから一度も鳴らなかった電話の様子に、ほんのり緊張を感じる。

 仕事の話ならば保名さんのスマホにかけるだろうし、セールスかなにかだろうか。

 手に汗が滲むのを感じつつ受話器を取ると、私が声を発するよりも早く向こうから話しかけられた。

< 88 / 381 >

この作品をシェア

pagetop