何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

雪のない世界で

「かずさ。」

りんは城の前でかずさの姿を捉え、その名を呼ぶ。

「わいは、どうしたらええんや。」

りんがすがるような目で、かずさを見た。りんは困惑していたのだ。
この町の様子は、明らかに以前とは違っていた。
人々は混乱し始め、得体のしれない恐怖に怯えていた。
そして、この町には、以前のような活気はなくなっていた。

「…何が望みなの?この国を潰す事?天使教を倒す事?」

その視線から逃れるかのように、かずさは空を見上げた。

「…わいらはただもがく事しかできないんか?」

りんは静かにそう言って、遠くを見た。
今のこの状況を何とかしたいと思っても、りんは何をどうすればいいのか、わからなくなっていた。

「…。」

しかし、かずさは口をつぐんだままだ。

「かずさには、どんな未来が見えてんのやろうな…。」

りんは、かずさがその答えを口にしない事を知っていた。
しかし、めずらしく弱気になっているりんは、聞かずにはいられなかった。

「誰も苦しまないで変える事はできない…。時代の境目には痛みが必要。」

かずさはゆっくりと噛みしめるように、その言葉を口にした。
りんはかずさのその言葉に、目を見開いた。

「痛み…。」
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