何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「もう時間がない。」
星羅は一歩一歩、着実に歩を進めていく。
その度に鼓動が早くなるのを感じながら。
『火がついたら、燃え尽きるのは早いわよ。』
そう、星羅には分かっていた。
かずさの言う通り、もう残された時間はあまりない事を。
カツン
そしてその場所で、星羅は足を止めた。そうここは、天音がよく訪れる池のある中庭。
この中庭も、火事の被害はそれほどなかったようだ。
焼け焦げた跡も、ほんの少しだけ。
ここに彼がいるかいないか、それは賭けだった。
でも、星羅にはわかっていた。彼女の使教徒としての能力は、星で占う星占い。
そして、それをするのは、特別な時だけ。
「京司。」
星羅は目の前にいるその人物の名を、はっきり口に出し呼んだ。
「え…?」
京司は突然その名を呼ばれ、後ろを振り向いた。
「お前…。」
京司はそこに立つ彼女を、目を細めながら見つめた。