私はあなたを信じている。
あなたの愛も、あなたを愛する自分の心も信じている。
――でも、私たちの未来だけはどうしても信じられない。
コンシェルジュの阿澄杏香(あすみきょうか)には、
忘れられない苦い初夜がある。
自分に自信のない彼女を愛した橘深冬(たちばなみふゆ)は、
十年前のクリスマスに恋人をベッドに残して姿を消した。
そうなって初めて知ったのは、
彼が老舗旅館〝たちばな〟の御曹司だということ。
そして十年後。
深冬は若きホテル王として再び杏香の前に姿を見せる。
「お前の中では終わったかもしれないが、
俺の中では終わることすらできていない。
それに――終わらせたくない」
十年間、忘れられずに想い続けていたのは杏香だけではなかった。
誤解を解き、再びやり直そうとするふたりだが……。
(今度こそ彼を失ったら、私はまたあの朝と同じ思いをする)
愛しているのに踏み込めず、
『終わらせない』ために『始めない』ことを選ぼうとする杏香。
「お前が信じるのは俺の言葉だけでいい」
「全部くれてやる。俺はお前のものだ。これから一生、永遠に」
呪いを解く鍵はただひとり、愛した人の言葉だけ――。
- あらすじ
自分に自信がない杏香は、十年前に深冬から捨てられたことで恋愛がトラウマになった。しかし十年後、ホテル王として大成した彼に再び出会い求められるようになる。応えたい気持ちと、応えるのが怖い気持ちで苦しむ杏香だが……。「なにも考えられなくなるまで、ゆっくり時間をかけて愛してやる」溺れそうな愛情に包まれる杏香と、彼女のためには狂うことも厭わない深冬の未来の行方は……?