海とメロンパンと恋
頭さんが攻めてきますっ



アルバイトが終わった翌日から
また穏やかな日常が戻ってきた


午前中は家事をこなして
おにぎりを持って公園に散歩

医療事務の勉強もテキストのページが進んできた


相変わらず公園とマンション以外は
買い物もお兄ちゃんと一緒だから


過保護だなぁってしみじみ思う


日差しが日に日に強くなってきたから
お昼の公園散歩は朝か夜に変更しなきゃ


真っ黒な牛若丸には厳しい季節が巡ってきて

ベンチに座る私の隣で体温調節のためか
舌を出してハァハァ言ってる


「お水飲む?」


牛若丸用のお水をプラ容器に入れてやると

一気になくなった


「やっぱ暑いか」


木陰なのに差し込む木漏れ日に目を向けた瞬間


近づいてくるシルエットに息を飲んだ


・・・・・・嘘


初めて見るスーツ姿の頭さんは
暑さなんて吹き飛ばしたかのように涼しげな顔が見て取れる


・・・っと、ダメダメ


知らないフリしなきゃ


牛若丸のリードを握りしめて
また医療事務のテキストに視線を落とした


目に入る文字よりも
敏感になる耳は


頭さんの動きを探っていて

強く打ち過ぎて口から飛び出すんじゃないかって心配になる胸は


早く通り過ぎて欲しいと願う気持ちと裏腹に


気付いて欲しいなんて


暑さにやられたとしか思えない
馬鹿なことを思っていた

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