離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
四人掛けのテーブルに私と真紘さんが隣り合い、雨音さんはその向かい側に腰かけた。
食前酒のミモザで乾杯し、前菜のサラダ、生ハムを楽しみつつ、雨音さんがぽつぽつ愚痴を語りだす。
「どうやら専務は、私を取引先の男性陣を喜ばせるための道具と思っているみたいなのよね。そりゃ、プライベートでは胸の開いた服を着たりするけど、秘書の仕事でもそうしろって言うの。シャツのボタンはギリギリまで開けて、スカートも短いものがいいって」
いくら専務でもそれはひどい……。
絶句する私の横で、真紘さんも嫌悪感をあらわにする。
「完全にセクハラですね、それは」
「ええ。……でも、専務は社長が溺愛するご子息ですから、楯突いたら私なんて握りつぶされるのが目に見えてます。職を失いたくなければ、耐えるしかないんですよね」
雨音さんは物憂げに長い睫毛を伏せ、ため息をついた。
これじゃ、雨音さんがいつかストレスで参ってしまう。どうにかならないのかな。
考え込んでいると、真紘さんがふと私に厳しい視線を送る。