イノセント・ハンド
第4章. 心理捜査官
朝礼が終わり、皆はいつもの仕事へと散らばって行った。

『富士本さん、お久しぶりです。』

無表情のまま6年振りの挨拶をする紗夜。

『おお。すっかり大人になったな。向こうでの働きは聞いてるよ。』

サングラスをしたその美貌には、もう少女の面影はなかった。

『はい。おかげさまで、色々と勉強になりました。』

『しかし、急に日本で、それもここで働きたいと聞いた時には驚いたよ。』

『わがまま言ってすいません。富士本さんへの恩返しもありますし、やはり生まれた国へ戻りたくて。』


富士本は、彼女の笑顔を一度も見たことがなかった。

「盲目」に慣れた彼女は、10歳の頃から、不思議な能力を見せる様になった。

人の言動、あるいはオーラの様なものを感じ取り、その深層心理を読むことができるのである。

それに気付いたのは富士本であった。
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