イノセント・ハンド
第7章. 標的
~12月27日~

警視庁創立150周年イベント当日である。


ドーム周辺には、厳重な警備が敷かれていた。


『東京にこんなに警察官が居たのかよって感じだな。人件費だけでも、バカにならないね。』

『ほんとよね、気持ち悪いぐらいだわ。』

『私たちも、その一人です。』


宮本と咲のボヤキに、紗夜の冷たい一言。


『ま…まぁね。』

(ほんっとに、やりにくいわこのコ。)

『ごめんなさい。』

『えっ?いぇ、気にしなくていいのよ。…って、何で分か…』


サキの疑問に警視庁1のイケメン(審査員 by サキ)が割り込む。

『ご苦労様。富士本さんのところの方ですね。』

『はっ!はい。鳳来咲、独身です。あっ…(焦;)』

『はい?』

『なに勝手にお見合いしてんですか!サキさん。』

風井が、チラッと無言の紗夜を見る。

『私たちは、何を?』

宮本が問う。

『あぁ、今日は来賓者も大勢来ています。異常がないか、そちらの控え室を確認して貰えますか。』

『分かりました!』

『では、よろしく。』

風井が去って行く。


『よ~し!気合い入れて働きますよ~。』

俄然やる気満々になった宮本。

『ちょっとジュン。こんな年末にイベントやりやがって、全く!とかボヤいてたあなたが、何を急に燃えてんのよ。』

『だってサキさん。来賓には、有名人も大勢来てるんですよ。しまったなぁ…サイン帳持って来るんだった。警察手帳じゃ…マズイですよね?』

『あんたって幸せ者ね、ほんとに。あれ?サヤ、どうしたの?』


黒手袋のこぶしを握り締め、棒立ちした紗夜の唇が震えていた。

『大丈夫ですか?』

宮本が心配そうにサングラスを覗く。

『ご…ごめんなさい。大丈夫です。何だか急に寒気がして…。』

『風邪じゃない?早く中へ入りましょ。』


三人は、物々しい警備の中を、ドームへと入って行った。
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