没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
ブルノが仕事部屋から出てきていつもの席に着き、ルネがテーブルから声を張り上げる。

「オデット、ケトル持ってきて」

「はーい」

ダルマストーブの上でシュンシュン音を立てているケトルからティーポットに湯を注ぐと、かぐわしい香りが立ち上る。

ティータイムの始まりで、五人は当たり前のようにテーブルを囲んだ。

「それで、結婚はいつに決まったの?」

ルネがバスケットのシュークリームに手を伸ばして問う。

「まだ日付は決まっていないわ。その前にやることがたくさんあって。婚姻の儀については話も出ていないの」

「国王陛下に許してもらって半月も経ったのに? 他のやることってなんなのよ」

社交界デビューもしていないオデットなので、まずは貴族たちに紹介するための晩餐会を開くと言われている。

招待状は発送済みで、開催日は一週間後だ。

これでも十分に急いでくれているので、オデットはジェラールに感謝している。

「ふうん。王族って面倒くさいのね。庶民でよかった」

ルネの正直すぎる感想にジェラールが苦笑したら、ドアベルが鳴った。

「こんにちは、あの、すみません……」

< 226 / 316 >

この作品をシェア

pagetop