秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
第八章

 翌日の朝。いつもより一時間早く、アズフィール様の部屋の扉をノックする。
 ──コン、コン。
「入ってくれ」
 私が薄絹のローブを手に部屋に入ると、アズフィール様は既に起きて窓の前に立っていた。
 朝日を浴びて凛と立つ彼の姿が妙にまぶしくて、私はスッと目を細くした。
「おはようございます」
「おはよう、メイサ」
「アズフィール様、十八歳のお誕生日おめでとう」
「ああ、ありがとう」
 アズフィール様は、エイル神聖王国の成人年齢である十八歳を迎えた。そして今日、ついに王太子であることを各国に宣明する立太子の礼が開催される。
「今日は素晴らしいお天気ね。まるで、アズフィール様の誕生日を空が祝福しているみたい」
「ははっ、それはいいな」
 アズフィール様は重要な儀式を前にしても特に気負った様子もなく、自然体だった。
 アズフィール様はこの後、儀式に関連した予定が朝からすし詰めになっている。
 今日ばかりは、頭髪や身支度も専用の者が整える。私の出番はない。
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