秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
第二章

 俺がお忍びでメイジーの町を訪れたのは、一年ぶりに諸国漫遊の旅から帰国したロディウスがこの町で羽を伸ばしていることを偶然耳にしたからだった。
 わずらわしい護衛は途中で全員撒いてきたが、不安は微塵もない。俺の剣の腕は、鬼神の名を近隣諸国に轟かせる騎士団長にだって負け知らず。護衛は皆、俺よりも弱いのだ。
 俺はアズフィール・フォン・エイル。名前にエイル神聖王国の国名を戴く、この国の第一王子だ。
 ロディウスというのは王妃である母の弟で、俺の叔父にあたる。ロディウスは貴族らしからぬ自由奔放な男で、侯爵という地位にありながら王都で大人しくしていたためしがなかった。
 年中自ら商隊を率いては諸国を漫遊している風来坊かと思いきや、彼の商才は侮れない。目利きに優れ、彼が買い付けてきた異国の品々は社交界で高い評価を得ていた。
 二十以上の年齢差があるが彼とは不思議とウマが合い、ずっと個人的な友好が続いていた。
< 42 / 340 >

この作品をシェア

pagetop