結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~

ホテルで朝食を

 目が覚めると肌触りの良い真っ白いシーツとふかふかとした布団に、ここがどこなのか一瞬迷ってしまう。しばらくすると、夕べはアルベルトに連れられてホテルに来て、そのまま泊まったことを思い出した。

 リヒトはまだ寝ているが、寝相が悪く頭と足が反対になっている。普段から寝相は良くないけれど、普段より大きいベッドだったからどうやら回転してしまっている。

「ベッドから落ちなくて良かったわ」

 リヒトを起こさないようにそっとベッドから降りると、夕べ脱いだままかけて置いたエプロンドレスを着る。昨日ここに来た時はアルベルトの後ろをひたすら歩いていたから気にならなかったが、このホテルは街でも一番の高級ホテルだ。

 皺のついた服で廊下を歩くのは気が引けてしまうが、こんなところに自分が再び来ることもないと思い直す。恥をしのんでロビーを突っ切れば、それほどジロジロと見られることもないだろう。

 身支度を軽くすると、リヒトがもぞもぞと動き出し始め、瞼を擦りながら欠伸をしている。

「おはよう、リヒト。さぁ、支度をしたら帰ろっか」

 いつものように元気よくリヒトに声をかけたソフィアは、小さな体を優しく抱きしめた。





「アルベルト、少しいいかしら」

 執務室に使っている部屋の扉を叩いたソフィアは、「今行く」という返事を聞いて扉の前でリヒトと待っていた。コツコツと靴音を鳴らしたアルベルトは、もうすでに早朝から仕事をしていたのか書類を片手に持ち扉を開ける。今朝は黒のズボンに真新しい白シャツ、その上に灰色のベストを着ていた。

「ソフィアか、おはよう。昨日はよく眠れたかな」
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