【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)

五十五

 驚きを隠せないエルモに、リリアはピンクの髪をなびかせ可憐に笑った。エルモはいまいちどアルベルトらしく、深々、頭を下げ騎士の挨拶を彼女にする。

「アルベルト、かたっ苦しい挨拶なんていいわ、頼んでいたものは連れてきたの? カイ、次はイチゴケーキが食べたいなぁ」

「かしこまりました、リリア様」

 挨拶もなしに本題にはいり、遠くからきたアルベルト――私達にねぎらいの言葉はなかった。エルモの胸元にいるグレと、後ろのグルがリリアに対し険悪な雰囲気をかもしだす。

「あなた様が探しておられた、白いトラです」

 抱っこしている、グレちゃんを見せた。
 しかし、リリアはいちべつして眉をひそめて。

「え、白いトラ? ……アルベルト、どこにいるのよ? どこにもいないじゃない」

 ーーあれ、リリアにグレちゃんがみえていない?
 
「いいえ、リリア様。白いトラは僕の胸元にいますが? リリア様はお見えにならないのですか?」

 すこし意地悪く彼女にいっても、リリアは気にせずケーキを食べながら。

「みえない……ねえ、あなた達は白いトラ見える?」

 彼女の執事、側近、給仕たちにきく。 "いいえ"と男性たちは首を振った。
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