大人の女と男の関係
8.彼の事情とおやすみのキス
成哉は、私が断っても、千佳ちゃんとの約束だからと、家まで送ると言って聞かなかった。


仕方なく、私の部屋のある駅で一緒に降りた。


駅から部屋までは徒歩8分。


駅前を少し行けばすぐに住宅街に入る。


静かな夜道を並んで歩いた。


「ねえ、香菜さん」


前を見たまま話しかけてきた成哉の横顔を私は見た。


「あの頃、俺のことどう思ってた?」


私はそっと視線を前方に戻した。


その話は終ったと思ってたのに。


二人きりになってから、蒸し返すなんて……


どう答えようか迷っていると、成哉は畳み掛けてきた。


「千佳さんが言ってたみたいに、もう少し俺が積極的にアプローチしてたら、今頃、俺たち一緒になってたのかな」

< 144 / 304 >

この作品をシェア

pagetop