Devil†Story
―1か月後―


「お待たせしましたー。チーズケーキセットとチョコレートケーキセットになります」

始めにカタンと客にチーズケーキと紅茶のポットを渡す稀琉。

「ありがとうございます♪」


チーズケーキを受け取った少女がニコリと笑った。


「あのぅ…右手大丈夫なんですか?」


チョコレートケーキセットを稀琉から受け取りながら、もう1人の少女が尋ねた。

稀琉の右肩から右腕にかけて骨折した時と同じ様に包帯で固定されていた。

あの時、醜鬼の男に外された右肩の他に、肋骨も2〜3本折られていた為、見えないが腹にも包帯を巻いている。


稀琉はチョコレートケーキセットを渡すと「あぁ、大丈夫ですよ。ご心配お掛けしてスミマセン」と少し困ったように笑った。

「何したんですか?」

「えっと……あっ、オレ、夢中になりやすいタイプで…それで、近くの子ども達とハンカチ落としをして遊んであげていたら転んじゃって…運悪くブロックの所に思いっきり肩をぶつけて外しちゃったんですよ」

と、また困った様に笑った。

今のは嘘だが数年前に、稀琉は近所の子ども達とハンカチ落としをして思いきり転び膝と腕を打撲や擦ったという経験があった。

その時は我ながらどっちが子どもかと思ったものだった。

「わ〜、それは痛いですね」

「でも、子どもとそこまで遊べるって凄いですねー。将来は保育士さんか何かになるんですか?」

少女の何気ない質問に、一瞬だけピタッと止まった。

しかし、また笑顔で少女の質問に答える。


「……確かに保育士になれたら楽しそうですよね。あっ、じゃあそろそろ戻りますね。ごゆっくりどうぞ」

稀琉はそう言うとニコリと笑ってケーキを乗せていたカートを左手で押しながらキッチンの中に入って行った。


※この章からセリフの前に名前を入れませんのでよろしくお願いします。
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