ありのまま、愛すること。

この手のなかに残る祈り

「夢追う子どもたちの家」がスタートしたとき、32人の孤児のうち一人が、B型肝炎に侵されていました。

他の子全員も検査を受けさせると、別の子にも陽性の結果。

しかも、最初に判明した子よりもかなり重いというのです。

一体この国はどうなっているのかと思いながら、二人を病院に連れていき入院させたのですが、しばらくすると、次の理由から退院させられてしまいました。

「治療しても治らない」

「今、緊急を要するほど悪くない」

つまり、自宅療養せよというのです。療養できるような自宅があったら苦労しません。この二人のことは、自分が親となって面倒をみようと覚悟しました。

現地の事務局長と話し合いました。

すると、日本人のスタッフたちも含め、この子たち二人を「夢追う子どもたちの家」に戻してほしいと言っていると聞かされました。

しかし、先日訪問した「家」の様子を思い出すのです。

みな裸足で走り回り、一人の子が転び、足から血を流していました。

食事は一つの鍋から、全員が交代にお皿にそれぞれよそいます。

その周りで、大きな声で話している子どもたちもいました。

確かに、気をつければB型肝炎は感染しない病気だと言えます。

しかし、何十人もいる子どもの集団生活のなかで、本当に血液や唾液を管理できるのでしょうか。


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