【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】

5.年下の男の子 - 神楽 -





どうしてだろう……。



彼は私の生徒でしかないのに……
最近の私は、
おかしいよ……。



恋愛するなら、
大人な年上。



小さい時から、
近所のお兄ちゃんに憧れて
ときめいて過ごしてきたから、
恋に落ちるなら、絶対に年上だって
信じて疑わなかったのに……。






私……今……
多分……恋してる気がする……。





って自分の事なのに、
はっきりと『恋だ』って宣言が出来ないのは
大学生にもなって……
まだ一度も実体験がないからなんだろうな。



片想いって言うのは
たびたびあった。



高校の時も陸上部の先輩にときめいた。


でもその先輩には、
付き合ってた彼女さんがいて……
一か月たたずして玉砕。



それ以来……
それらしいときめきもなく、
ズルズルと過ごしてしまった私の青春時代。





おばあちゃんと一緒に生活しながら、
おばあちゃんの茶飲み友達の
『おじいちゃん』世代の人だけが
私の周囲にいた唯一の男性って言うのも大問題よね。




そんな私が……
今は、一週間に一度だけの彼が来る日を
心を弾ませながら待ってる。




誰にも言わない……私だけの秘密。





だけど……そのトキメキだけは
嘘じゃないから。






彼、恭也くんとの出逢いは、
今年の冬。

お正月が明けて暫くした雪の日。


坂の上から豪快に下まで滑り落ちた私に
声をかけてくれた。



あの時、坂の上から滑り落ちたことで
巡り逢う運命だったなら、
それはそれで……今も、太ももに残る
その時の傷跡すら……愛しさを感じる。





湯船に浸かって、
疲れた体を休めながら、
その時の傷跡に触れる。



捻挫した足首は、
傷跡もなく完治したけど……
擦りむいた太ももは、
今も傷が残ってる。




あの時……確か、
週末にセンター試験を控えてた彼。




彼は今18歳。
私は……21歳。




彼との歳の差は、3歳。



今、私が想う彼は……
年下の男の子。
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