銀棺の一角獣
囚人から表向きは客人へ
 アルティナはベッドに横たわっていた。キーランが来てから三日たっている。あれから彼はこの部屋を訪れようとはしなかった。

 食べ物の盆を受け取る時と返す時以外はこうしてずっとベッドに横になっている。
 本当に病気のふりをすれば、ここから出ることができるだろうか。なぜキーランを信じたのかは自分でもわからなかった。

 それでも、信じたのは自分だから――と、アルティナはキーランを待ち続けた。

 身体が熱っぽい。水分を欲しているのがわかる。水の入った水差しが部屋の隅に置かれていて、それがアルティナを誘惑する。

 簡単なことだ。ベッドを降りて数歩。そこに置いてある水差しを手に取ればいい。そうすれば水を飲むことができる。

 けれど――三日間、水分をとることすら拒否していた身体は、動かすのもやっとだった。
 まだ大丈夫だ。どこも悪くない――食事をすればすぐに元気を取り戻すことができるはず。

 アルティナは目を閉じる。キーランを信じて。
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