とある神官の話
4 雪降る街にて、少々の進歩と影
* * *
漆黒の外套。雪の降る街を眺めるそれは、美しい顔。青の髪が揺れる。高い建物の上に男はいた。雪はしんしんと降る「ああもう!」
その静けさを破るように、突如背後に現れた影に男は振り返る。燃えるような赤い髪を持つヤヒアもまた男と目があった。うっかりヤヒアは魅入るように黙り、やがてはっとして立ち上がる。
「やられたよ」
「そうだろうな」
「わかってたのかい?」
―――――アガレス。
そう呼ばれた男は、再びノーリッシュブルクの街を眺めた。本格的な冬の到来だった。あちこちで雪掻きをしている姿が見える。
雪をはらうヤヒアへの返答はなく、変わりに「美しいな」とアガレスは漏らした。雪で銀世界となった街は幻想的だった。
しかしヤヒアはそれ以前に、一人の神官によって邪魔されたことに苛立っていた。
「冬は嫌いではない」
「まあね。生き物が少ないし」