紫陽花ロマンス
10. いつか笑顔になれたら


フードコートのアイスクリーム屋さんに近いテーブル席に、大月さんの姿を見つけた。


頬杖をついて眺めているのは、アイスクリーム屋さん。


誰かの姿を捉えているわけではなく、視線はショーケースを覗き込む人にもレジに並ぶ人、店全体に向けられているようにも見える。


ふと目を細めて、息を吐いた。


大月さんの表情は、先週会った時と同じ。寂しそうで痛々しくて。


私は足を止めた。
ざわめいていた胸が、ぴたりと止まる。


もしかすると、先週見ていたカップルがいるのかもしれない。周りを見たけど、それらしき人は見当たらない。


あのカップルがアイスクリームを食べていたから? 疑問に思っていると、大月さんが私に気づいた。


ゆるりと手を挙げて立ち上がり、微笑んでくれる。その顔に、さっきの寂しさは感じられない。


「お疲れ様、そこのカフェに入ろうか」


大月さんは優しい顔で指差した。






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