狂妄のアイリス
 しばらくおじさんの部屋の前に立っていた私は、すっかり体が冷えてしまっていた。

 名残惜しさを感じながらも、扉から体を離す。

 リビングには戻らずに、おじさんの部屋とは反対側にある自分の部屋に行く。

 部屋の扉を開けると、そこで眠った記憶がないのにベッドが乱れていた。

 ベッドに首を傾げながら、私はクローゼットを開ける。

 私は登校拒否だけど、別に引きこもりというわけじゃなかった。

 クローゼットからコートを取り出し、タートルネックの上から羽織る。

 特になにも持たずに、私はそのまま部屋を出て階段を降りていく。

 階段を降りると、そこがすぐ玄関だった。

 靴を履いて、玄関を出る。

 家の鍵はコートのポケットに入れてある。

 引きこもりじゃないけど、外に出るのは久しぶりだった。

 深呼吸をして、冷たい空気を肺いっぱいに吸い込む。
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