魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
コハクとラスの物語
ラスをティアラに奪われた形になったコハクは、ルゥを抱っこしてぷらぷら城内や街や庭を散歩していた。

散歩しながら、小さかった頃のラスの話や、魔王城まで仲間と旅をしたことの話をルゥに言い聞かせる。

もちろんこの場合、リロイはワル役で自分が勇者様設定だ。


「チビがさあ、俺の城まで来るっつってんのにあの小僧が邪魔しやがって。お前もおっきくなったら自分で城立ててチビみてえに可愛くて天使みたいな女と大恋愛に落ちるんだぞー」


「まー?まー?」


「そうそう、ママみてえに可愛くて綺麗な子!でもあれだな。お前は俺みたいに不死になんのか?」


それを調べる術はなく、真っ赤な瞳と黒い髪はお揃いで顔もそっくりな我が子がへらっと笑った顔もそっくりで、夜が更けてお腹を空かせたルゥのためにキッチンに向かった。

そしてそこで鉢合わせたのは…


「あ!お前何やってんだ!チビたちの分が無くなるだろが!」


「………さっき…ラス…食ってた…」


冷蔵庫の前にはさもそこが定位置だと言わんばかりに冷蔵庫を全開に開けてその前に椅子を引き寄せて座っているデスが居た。

膝にはハムや卵、パンやオレンジジュースなどの大量の食材が。

冷蔵庫が空だと落ち着かないコハクが毎日せっせと買い集めて来る食材はいつもあっという間にデスに食べられてしまうのだが、それを承知で買ってくるコハクもコハクだ。


怒ったコハクがデスを押しのけて椅子にルゥを座らせると、両腕に食材を抱えたデスはそのまま床に座って再び飲食タイム。

しかもルゥはデスが大好きなので、コハクから離れてデスの隣にちょこんと座っていつもの癖が出てデスの指でおしゃぶりを始めた。


――よくよく考えればルゥの命はデスが助けてくれたようなものなので、強く出ることのできないコハクはフライパンを温めながらワインボトルをラッパ飲みしてデスを飲みに誘った。


「今夜は女たちだけで騒ぐっつーからお前ん部屋で飲もうぜ。カイと小僧は来れねえからオーディンを……ああ、あいつはいいや」


独りで生きてきたローズマリーは大人数で騒ぐのが苦手だ。

きっとローズマリーはラスの誘いを断っただろうし、オーディンを奪ってしまえばローズマリーは独りになってしまう。


「やっぱ俺たちだけで飲もうぜ。あ、ルゥ、お前はオレンジジュースな」


「あーいー」


男は男で、女は女で。

こくんと頷いたデスの分まで腕を奮ったコハクはラスに意識を配りながらきっとはしゃいでいるであろうラスを想って微笑んだ。
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