君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
8.選択
今日は会談の日。
朝から城の中が慌ただしい。
重たそうな荷物を抱えて、あっちからこっちへと運んでいる。

会談の準備に、皆大忙しなのだ。

カナトも朝早くから身なりを整えて出て行っちゃった。
寂しいのもあるけど、カナトが頑張ってるときに部屋でぼーっとするしかないのがもどかしい。

でも、ぼーっとしてるのには理由がある。
暇なのはもちろんだけど、それとは別にカナトの朝の言動が大きく関わってる。

朝、部屋を出るまでのほんの少しの時間。
「こうやって同じ朝を迎えられるって、なんかいいな」
なんて、とても爽やかに言った。

それがずっと頭のなかに響いてるし、そのときの笑顔がまぶたの裏に焼き付いてる。

全く気取らず言うからずるいんだよな。

「やっほー」

おっと。

シンがいつの間にか部屋に入ってきていた。

「シン。おはよう」

こうやって突然現れるのにも、少しずつ慣れてきたかも。
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