美狐はベッドの上で愛をささやく

*・゚☆。・*悲しみと苦しみと……。*




 . ゜
。 。
 。





「……良」


「……紗良(サラ)」





わたしを呼ぶのは……だれ?


深い意識の中、真っ白な空間の中で、呼ばれた声に反応した。



「……紗良」


その声は、しわがれていて、優しい響き。



誰だろう?

聞いたことがある声だ。




わたしは目を開けようと試みるものの……だめ。


目が開かない。



わたしはそのまま、意識を閉じ込めた。



そうすると、世界は暗闇に変化した。


――ここ、どこ?


周囲を見渡せば、遠くの方に誰かが立っているのが見えた。


身長はわたしよりも少し背が高い。

やせ細った体は和服を着こなしている。


見ただけでもわかる、優しい雰囲気。

短く切りそろえられた白髪のあの人は……。


「……っつ!!」

お父さんだ!!



そこでようやく、わたしは目の前にいる人が誰なのかを理解した。


慌てて駆け寄る。



目標まであと2メートルくらい。


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