祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「…いつか…イノリじゃない他の誰かに愛されたいと思う日が来るのかな?…イノリしか見てこなかった私に…イノリを忘れる日が来るの?」




キヨは包帯の巻かれた腕を握りながら、声を漏らして泣いた。




イノリは何かに縛り付けられてる。

それから解放されない限り、イノリは戻って来ない…



キヨはそれを確信した。






「キヨ、大丈夫?イノリとは仲直り出来た?」




ケンがキヨの病室に戻ってきた。



ケンがキヨに近付くと、キヨは苦しそうに息を立てながら眠っている。





「…そっか。仲直り…出来なかったんだな」



ケンは濡れているキヨの頬に触れながら呟いた。








解き明かされた過去はあまりにも悲しすぎて


20歳の心では

許す事も受け入れる事も出来なかった。




だから、辛い。





愛しすぎてしまった想いは
行き場もなくて消えてもくれないから

どうしようもないけれど、
どうにかしないと生きてはいけない。



だから、無理矢理消し去るしかなかった。









彼らの日常は静かに変わり始めていた。
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