スイートホーム
私の席の前に水とおしぼりを、そしてすでに注文していたらしいオレンジジュースとホットコーヒーを、それぞれ加奈と麻美の前に置く。


「あ、アイスカフェオレ一つ、お願いします」


「かしこまりました」


店員さんが去ってから改めて二人に向き合うと、そのタイミングを見計らっていたように、加奈が再び笑顔で言葉を発した。


「久しぶりだね~、彩希」


「うん、ホント。1年と3ヶ月ぶり?だよね」


「ごめんね?貴重な休みの日に、呼びつけるような事しちゃって…」


「ううん。そんな事ないよ。むしろ誘ってくれてすっごく嬉しい。ただ、私に何か話があるって聞いて…」


「あ、うん…」


「その点すごく気になってたんだけど。一体どういう内容なのかな?」


すると加奈と麻美は一瞬顔を見合わせた後、すぐにまたこちらに向き直り、言葉を繋いだ。


「ちょっとここでは…。とりあえず、場所を移してからにしようか?」


「これから行くとこは個室だからさ。そっちの方が気兼ねなく話せると思うんだ」


「…そっか」


予想はしていたけどやはり、あまり第三者には聞かせたくない話という訳だ。


麻美が言っていたけど、加奈のここまでの対応を見る限り、確かに私自身に何か苦情を言うということではなさそうだ。


ひとまずその事だけは確信できたので、内心かなり安堵しながら返答する。
< 111 / 290 >

この作品をシェア

pagetop