スイートホーム
「ああ~。旦那さん、バリバリの営業マンだもんね」


「美味しいお店、色々と把握してそうだよね」


そんな会話を交わしつつ店内に入ると、レジ付近で待機していた50代前半くらいの男性店員さんがすかさず「いらっしゃいませ」と頭を下げた。


「12時に予約してあります、武藤と申しますが…」


「はい。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」


加奈の言葉に笑顔で頷きながら右手を前に差し出し、男性は歩き出した。


その後に付いて、すでに大勢のお客さんで賑わっているフロアを横目に通路を奥へと進んで行くと、いくつかのドアが等間隔で並んでいる、個室エリアと思われる場所まで到達する。


右手の奥から二番目のドアを開け、中へと促す男性に従い入室すると、入った順に適当に円卓前に腰かけた。


「予約時にご注文いただきました「シェフのお任せランチコース」にはお飲み物が付きます。こちらからお選びいただけますか?」


恭しく男性が差し出したメニュー表に三人で目を通す。


「やっぱ中華といったら烏龍茶かな?」


「うん、それオススメ。ちゃんとポットで出してくれるし。本場の味が楽しめるよ」


「あ、加奈も来た事あるの?」


「うん。旦那と一緒に」


「そうなんだ。じゃ、皆それで良いよね」


などとやいのやいの言い合いながら、無事に飲み物のオーダーも済ませた。
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