スイートホーム
そんな会話を交わしたあと、お姉さんはカウンター上の電話の受話器を取りどこかに架電を、小太刀さんはその場から小走りに駆け出した。


訳が分からずぼーっと見守る私達の横を通り過ぎ、エレベーターホールまで移動した小太刀さんは、一階に到着し、出口に向かっていた渦中の二人組の進路を遮るようにして立ち塞がる。


「なっ。何だよお前!」


「『いたばしゆい』ちゃん?」


明らかに挙動不審な男性の威嚇を無視し、小太刀さんが傍らの女の子に問い掛けると、一瞬驚いたように目を見開いたあと、「うん…」とコクリと頷いた。


「良かった。皆で探してたんだよ」


そこで小太刀さんは男性に向き合うと、しっかりと視線を合わせる。


「ありがとうございますお客様。ゆいちゃんを保護して下さっていたんですね?」


「…は?」


「お母様が事務所でお待ちです。一緒にいらしていただけますか?きっと一言お礼を言いたいと思いますので」


「な、何訳の分からないこと言ってんだよ。これ、俺の子だから!」


言いながら、男性はゆいちゃんの手を改めてきつく握り直した。


「しかし、先ほどお名前を確認しましたら、しっかりと肯定されましたが」


「俺も『いたばし』でこの子は『ゆい』なんだよ!そんなん良くあるありふれた名前だろ?ったく、変な言いがかりつけやがって…」
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