スイートホーム
小さい手をふるふると振りながらこちらを見上げ、別れの挨拶を述べるゆいちゃんに、私達はそう返答しつつ手を振り返した。


通路を進んで行く3人を見送ったあとふと周りを見てみると、遠巻きに私達のやり取りを見守っていた野次馬さん達は本来の目的を思い出したかのように動き出し、受付のお姉さんも新たに来店したお客さんに話しかけられ対応を始めた所だった。


平和で楽しい、デパートの日常が戻って来たという訳だ。


すると傍らの麻美が「はぁ~」と深く長いため息を漏らした。


「……なんか、あまりの怒濤の展開で、ドッと疲れが出ちゃったよ…」


「ホントだよね」


「ちょっとさぁ、どこかで休憩しない?この状態のまま店を見て回る気力がないんだけど」


「私も~」


「あ。じゃあ、あそこが良いかな?ベンチと自動販売機もあるし」


ちょうど目に付いた、数十メートル先にあるエスカレーター下のそのコーナーを指差しながら、私は二人にそう提案した。


「そうね」


「賛成。ついでにお茶もできるしね」


意見がまとまった所でさっそく当該コーナーまで移動した。


私と加奈はそれぞれ紙コップのコーヒーとミルクティーを、麻美は棒つきのバニラアイスを買ってベンチに腰かける。


ついさっき『お腹パンパン』と言っていたのに、販売機の前に立った途端、急激にアイスへの食欲が沸き起こったらしい。
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