スイートホーム
「そうねぇ…。彩希の方は?それ、もう飲み終わった?」


「……え?あ、う、うん」


一応会話を耳にしてはいたものの、心ここにあらずだった私は、加奈の問いかけに一瞬間を開けてしまい、慌てて返答した。


「大丈夫。もう飲み終わってるよ」


「体力も回復した?あちこち動き回れそう?」


「うん、バッチリ」


「そう。だったら行こうか」


納得したように頷き、立ち上がった加奈に倣って、私も腰を上げた。


何だか色々と腑に落ちない気分ではあったものの、麻美の言う通り、時間は無限に使える訳ではない。


加奈は先ほどの会話の通り夕飯に間に合うように帰宅しなくてはならないし、それを事前に聞いていた私も、寮の夕飯をキャンセルしなかったので、遅くても8時くらいまでには戻ってそれをいただかないと、後片付けをする奥さん達にご迷惑をおかけしてしまう。


自分のモヤモヤはとりあえず保留にしておいて、予定されていたスケジュールをサクサクとこなしていかなければ。


私はそう結論を出すと、先にゴミ箱まで歩を進めていた加奈を追いかける形でそこに近付き、紙コップを投下した。


「さて、じゃあ、まずはどこから行こうか?」


次いで、二人に順に視線を配り、先ほどのお返しとばかりに、満面の笑みを浮かべながらそう質問を繰り出したのだった。
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