スイートホーム
周りの人より頭一つ分高いから、必然的に目に入りやすいのかもしれないけど。


一瞬迷ったあと、目的地が同じなのに、道中ずっと距離を取り、無視し続けるのも変だろうと考え、さっさと声をかけてしまう事にした。


「小太刀さん…」


車体の揺れに抗いながら人波をかき分け、彼の元へと歩を進める。


「同じ電車だったんですね。お仕事お疲れ様でした」


「ああ…」


私の姿を認めると、小太刀さんは組んでいた腕をほどき、体の向きを変え、きちんと視線を合わせて返答してくれた。


「先ほどの件、どうなりました?」


その事に浮かれつつ、流れで質問してしまってから『しまった』と後悔する。


小太刀さんには業務に関しての守秘義務があり、こんな気軽に、しかも公の場で尋ねるべきではなかった。


「二人は無事会えた」


しかし小太刀さんはサラリと答えてくれる。


「あの子に怪我はない。男は然るべき機関に引き渡した。無事に解決だ」


もちろん、差し障りの無い範囲内で、なおかつ周りの人には何の事やら分からないようにだけど。


『二人』というのは言わずもがなでゆいちゃんとお母さん、そして『然るべき機関』というのは警察を指しているのだろう。


誘拐未遂事件なのだから、その介入は当然の事である。


「そうですか。良かったです」


心の底から安堵のため息を漏らしつつ、私はそう答えた。
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