スイートホーム
もちろん、怖い思いをしたゆいちゃんには心のケアが必要で、そういう意味ではこれからが本番なんだけど。


でも、そこは親御さんを信じてお任せするしかない。


私達にはもうゆいちゃんと交流する機会はないのだから。


そこで会話は終了し、私と小太刀さんはお互い無言になった。


それ以上はその話を展開する事はできないし、かといって新しい話題も思い浮かばなかったから。


関係性によっては会話が弾まないととても気詰まりだし、心底焦るものだけど、対小太刀さんだと全然そんな雰囲気にはならなかった。


むしろまったりとした空気が流れ、私はかなりリラックスした状態で、小太刀さん同様、ドアのガラス越しの目まぐるしく移り変わる景色をのんびりぼんやり眺めていた。


だがしかし。


ほどなくして、その至福の時に水を差される事となる。


小太刀さんに話しかけるべくここまで移動して来た時に、近くに50代くらいの男性が居る事は確認していた。


今、その男性は私の後方に立っている。


その方が先に居て、私が後から割り込む形になったのだから、そういった位置関係に文句を言う筋合いはもちろんないのだけど…。


男性の鼻息がやけに荒いのだ。


その事に気付いてからずっと、耳の後ろ辺りに、コンスタントに『ふー、ふー、』と熱い息をかけられている。
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