スイートホーム
…こんなに接近しなくちゃいけないほどの混み具合ではないよね?


目当ての駅に到着したらスムーズに下車できるように、ドア付近で待機していたいという人なのだろうから、その位置をキープするのは仕方ないとして、もう少し離れてくれても良いんじゃなかろうか。


せめて体の向きを変えるとか…。


とても落ち着かないし、正直不快感マックスだったけれど、かといって大っぴらにどこか触られているという訳ではないから、迂闊な対応はできない。


これはもう男性に不信感を抱かせないように、私がさりげなく離れるしかないだろう。


そう決心し、さっそく行動に移そうとした次の瞬間。


小太刀さんが突然、私の右腕を掴んで自分の方に引き寄せた。


『え?』と思っている間に、ドアに密着するように立たせられ、同時に小太刀さんは私の背後に素早く移動し、言葉を発する。


「あの青い建物、何だか分かるか?」


その質問に促され、条件反射的に外に視線を向けると、ちょうど当該建物前を通過する所だった。


「え?こ、これですか?」


内心かなりてんやわんやしながら、何とか言葉を返す。


だって、まさか小太刀さんがこんな積極的に、話を振ってくれるなんて思ってなかったから。
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