スイートホーム
私の後を追って来た文子さんにドアの前で足留めされる。


「ちょっと、大丈夫なの?あの人と二人きりになって」


心底心配そうな表情だ。


「だ、大丈夫ですよ?」


少しでも彼女の不安を払拭できるよう、頑張って笑顔を作って返答する。


「以前勤めてた会社で…仲良くしてもらってた人なんです。別に、怪しい人ではないですから」


先ほどの廃人感満載の優さんを見る限りどうにもこうにも説得力がなかったけれど、とりあえずそう説明するしかない。


「でも…」


案の定納得していない様子の文子さんは、しばし考えた後「あ!」と興奮気味に言葉を繋いだ。


「そうだ。寮内にいる男の人、誰か呼んでこようか?その人にこっそり後を付いて来てもらうとか」


「えっ?そ、そんな、大丈夫ですよ!」


ギョッとしつつ、その提案は慌てて辞退した。


「私事でご迷惑をおかけする訳にはいきません」


この時間部屋にいるという事は、非番はもちろんだけど夜勤明けで帰って来たか午後から出勤の可能性もあるという事だ。


いずれにしろ、貴重なくつろぎタイムを邪魔してしまっては申し訳ない。


そもそもこれから繰り広げられるであろう元カレとのあまりスマートではないやり取りを第三者には見せたくないし。


「あ、ちょっとすみません」


そう断りを入れてから、いまだ不安顔の文子さんをひとまずその場に残し、私は急いで室内に入った。
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