スイートホーム
ここで話を終わりにされてしまったら不完全燃焼にも程があるし、それより何より、優さんの為にも、すべてを吐き出させてあげた方が良いだろうと判断した。


私の手の動きに安堵したようなため息を一つ漏らすと、彼はポツポツと今までにあった事を語り始めた。


「彩希が会社を辞めて、ちょっと経った頃にさ…」


「うん」


「梨華にせがまれて、あるホテルのレストランに行ったんだ。ウェディング用の食事をバイキング形式で食べられるっていうフェアをやってたんだけど」


…私が職場を去ったのは7月末だったから、優さんと梨華が正式に付き合い出してから、2ヶ月弱の頃って事かな?


付き合って間もなくで、もうそんなバリバリ結婚を意識させるイベントに参加していたんだ。


私は連れて行ってもらった事なんかないけどね。


まぁ、それは私が積極的にそういう方向に話を持って行かなかったのが悪いんだろうけど。


「そこに、田中さんが来てて…」


「……え?田中さん?」


一人複雑な思いを抱えながら悶々と考え込んでいたものだから、一瞬優さんの言葉に反応が遅れた。


「あ…。社食で働いてる田中さんのこと?」


五葉商事でとてもお世話になった、古株パートの田中さん。


「ああ」


その場に腰を落とし、胡座までかいていた優さんは、とても疲れたように、力なくこっくりと頷いた。
< 160 / 290 >

この作品をシェア

pagetop