スイートホーム
「ウェディング用の料理って言っても、別に客はカップル限定ではないから…。友達同士や、家族連れと思われる人もちらほらいた。田中さんも娘さんと一緒に来てたんだ。そろそろそういう話が出始めたみたいで」


田中さんの娘さん、ご結婚が近いのか。


だから私が仕事を辞めると言った時、真っ先に寿退社の可能性を示したのだろうか。


「遠目で気付いてヤバいと思ったんだけどさ、まさかそこで帰る訳にもいかないし、バイキングだから料理を取りに行かなくちゃいけなくて、必然的に見つかっちまった」


優さんはふー、と深くため息を吐いた後続けた。


「梨華を見てすげーびっくりしてたよ。そりゃそうだよな。彩希と付き合ってた筈の俺が、他の女とウェディングフェアなんかに来てるんだから。梨華は梨華で『優さんの会社の方ですか?彼がいつもお世話になっております』なんて、まるで女房気取りで能天気に挨拶してくれちゃって…」


「でも、その点に関しては別に梨華に罪はないんじゃ…」


頭を両手でワシャワシャとかきむしっている優さんに向けて、私は努めて冷静に意見した。


結婚を前提に付き合っている人の、勤務先の人物に向けての対応として、別に不自然な所はない。


何で私が梨華のフォローをしなくちゃいけないのかと思うけど、客観的に見て落ち度がないのに、理不尽に責め立てるような事はしたくない。
< 161 / 290 >

この作品をシェア

pagetop