スイートホーム
なぜ私がそんな事を聞いてあげなくちゃいけないのかという思いはあったけれど。


「それでさっき話した彩希へのアポなし訪問事件だろ?もう、コイツとは無理だ、絶対に別れようと思ったよ。いつ別れを切り出すか、どういう風に話を持って行くか悩んでたら、ある日突然」


でも、今の優さんはきっと誰にも止められない。


「あっちから別れを切り出されたんだよな」


「え…?」


「他に好きな人ができたんだってさ。だからもう、あなたとは付き合えないって」


その内容とはウラハラに、優さんの口調と表情は心底ホッとしたような柔らかなものに変化した。


「何だそりゃ!?っていう怒りもあったけどさ、でも、『これでコイツから逃げられる』っていう気持ちの方が強かった。だから速攻で快く了承したよ。最後には、お互いしんみりと、涙ぐみながら握手なんか交わしちゃったりしてさ。男女の別れとしてはすげーキレイな終わり方だったと思う。だけど…」


しかし、すぐさま優さんの眉間にはシワが寄り、口調も憎々しげなものに戻る。


「清々しい気持ちになれたのは、ほんの短い時間だったよ。すぐにその事実に気付いて愕然としたんだ。あいつと別れたからって、壊されたものが元に戻る訳じゃないじゃないかって」


まるで百面相を見ているようだ。
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