スイートホーム
休暇を取る事を促した部長さんだって、きっと一人で空回りしている優さんを純粋に心配して、鋭気を養う機会を与えて下さっただけだろうに、何でそんなひねくれた考えになるのだろうか。


「あのね、優さん」


内心うんざりしつつも、それを隠して私は穏やかに彼に語りかけた。


「今の優さんは、悪い方悪い方へと考え過ぎだと思う。部長さんの言う通り、有給期間は何も考えずにゆっくりと休んで、それで仕事に復帰したら、とにかく自分がやるべき事を粛々とこなして行ったらどうかな?」


小さい子に向けて、噛んで含めるような口調で。


「もし、その姿を見ても、周りの人が認めてくれなかったり、理不尽に冷たくされるようだったら、それはその時にまた考えるという事で…」
「だったら、戻って来てくれよ、彩希!」


私の言葉を遮ると、優さんは両手ですがるように私の両腕をギュ、と強く掴んで来た。


「いたっ…」


「俺、つくづく思ったんだ。彩希と一緒に居た頃は、すごく順風満帆な人生だったよなって。だから今回も、お前が戻って来てくれさえすれば、きっとすべて元通りになるよ!俺、きっと頑張れる!」


「……だから、それは無理」


思わず発した私の苦痛の声も無視し、自分勝手に捲し立てる優さんの姿に、何とも言えない気持ちになりながら、私は返答した。


「何でだよっ」


「だって私、もうあなたのこと、好きじゃないから」
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